万葉歳時記 一日一葉

「万葉集」から1300年の時を超えた現代短歌・俳句まで、
昔と今を結ぶ日本人のこころの歌を歳時記にしました。

大阪

#5100 大空の青きとばりによりそひて人を思へるこすもすの花

令和8年9月14日(月) 【旧 8月4日 大安】 白露・鶺鴒鳴

大空の青きとばりによりそひて人を思へるこすもすの花
  ~与謝野晶子(1878-1942)

260914_コスモスや風に撓《たゆ》みてもれもなし
Photo:ピンクのコスモス ~photoAC(TwiggyBBTさん)

 コスモスの原産地は熱帯アメリカで、日本には明治12年、イタリア人のラグザーという美術教師がはじめて持ち込みました。この花に付けられた和名が「秋桜《あきざくら》」です。与謝野晶子にはこの花を詠んだ短歌がいくつもありますが、すべて漢字ではなく、ひらがなを使っています。漢字の「秋桜」をそのまま「コスモス」と訓むようになったのは後にさだまさしが山口百恵のために書いた「秋桜」のヒット以降一般化したと言われています。

コスモスや風に撓《たゆ》みてもれもなし
  ~皆吉爽雨(1902-1983)

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#5098 此世をばどりやおいとまにせん香とともにつひには灰左様なら

令和8年9月12日(土) 【旧 8月2日 先負】 白露・草露白

此世をばどりやおいとまにせん香とともにつひには灰左様なら
  ~十返舎一九(1765-1831)辞世

この世とはそろそろお暇じゃ。線香の煙とともに、終にはハイさようなら。

260912_此世をばどりやおいとまにせん香と
Photo:十返舎一九

 『東海道中膝栗毛』を残した戯作者で絵師でもある十返舎一九。駿河の生まれで本名は重田貞一。「一九」は幼名の幾五郎からとったようです。江戸に出て武家奉公の後、大坂へ移り駿河時代から縁のあった大坂町奉行小田切直年に勤仕した際に戯作を始めたとされています。1794(寛政6)年に江戸に戻り蔦屋重三郎に寄宿。彼に勧められて黄表紙を刊行しています。文才はもちろん、挿絵も版下も自分で行うという、蔦重にとってはありがたい存在だったようです。晩年は深酒により身体を壊し、1831年9月12日(天保2年8月7日)66歳にて死去。

医者衆は辞世をほめて立たれけり
  ~江戸古川柳

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#5091 サブマリン山田久志のあふぎみる球のゆくへも大阪の空

令和8年9月5日(土) 【旧 7月24日 赤口】 処暑・禾乃登

サブマリン山田久志のあふぎみる球のゆくへも大阪の空
  ~吉岡生夫『勇怯篇 草食獣・そのIII』

 阪急ブレーブスの下手投げエース山田久志の球を打ち返したのは巨人軍の王貞治。1971(昭和46)年の日本シリーズ第3戦、完封勝利目前の9回裏に王貞治から逆転サヨナラ3ラン打たれ、マウンドに崩れ落ちた山田投手をオマージュしています。この短歌では大阪の空とありますが、実際の舞台は後楽園球場でした。その王貞治が756号本塁打の世界記録を成し遂げて国民栄誉賞第一号が贈呈されたのが1977(昭和52)年9月5日。今日は「国民栄誉賞の日」とされています。

260905_サブマリン山田久志のあふぎみる
Photo:巨人 vs 阪急第3戦(1971年10月15日)~週刊ベースボールOnline

 野球人で国民栄誉賞といえば思い出すのはこの試合でも阪急のセンターを守っていた「世界の盗塁王」福本豊。しかし、彼は受賞を辞退しています。「そんなん貰うたら立小便もできんようになるがな」と言うセリフが知られていますが、その本心は「国民栄誉賞」は王さんのように野球人の手本になって、国民に敬愛されるような人物でないといけないという思いがあったと語っています。

冬木の芽怪我で早去る盗塁王
  ~佐方敏明「ぐろっけ」

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#5090 目がさめるだけでうれしい 人間がつくったものでは空港が好き

令和8年9月4日(金) 【旧 7月23日 大安】 処暑・禾乃登
 
目がさめるだけでうれしい 人間がつくったものでは空港が好き
  ~雪舟えま(1974-)『たんぽるぽる』

260904_空港ににつぽんの虹濃かりけり
Photo:夕暮の関西国際空港 ~たびかん

 1994年9月4日、世界初の本格的な海上空港で、日本初の24時間運用空港でもある関西国際空港(KIX)が開港して今日で32年目。早いものです。先日放送されたNHKの『新プロジェクトX〜挑戦者たち〜』では「世紀の難工事 関西国際空港〜地盤沈下との果てなき闘い〜」と題して関空開業の道程を紹介していました。開港してからも毎年の地盤沈下に備えて900本の柱をジャッキアップし続けるというという驚きの構造とメンテナンスの先端技術には驚くばかりです。

空港ににつぽんの虹濃かりけり
  ~町田しげき(1909-1997)

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#5071 母の言う「じゅうぶん生きた、死にたい」はデッドボールで打ち返せない

令和8年8月16日(日) 【旧 7月4日 仏滅】 立秋・涼風至
 
母の言う「じゅうぶん生きた、死にたい」はデッドボールで打ち返せない
  ~俵万智(1962-)『アボカドの種』

 病床の母の言葉に野球少年は適切な言葉で応えてあげられない。それを打ち返すことのできないデッドボールに喩えている短歌です。そもそも死球(デッドボール)というのは和製英語であって、英語では "hit by pitch"。故意に頭部をねらったと疑われる場合は "bean ball"とも呼ばれます。今日この話題をもってきたのは1920年の今日8月16日に、長いMLBの歴史で唯一試合中の頭部デッドボールでの死亡事故があったと知ったからです。


 亡くなったレイ・チャップマンはインディアンズの遊撃手でした。彼はヤンキースのカール・メイズの速球を左のこめかみに受けて昏倒し、翌早朝に死亡しています。これを契機に現在の打撃用ヘルメットの進化、スピットボールなどの不正行為、更には選手によるボールの交換要求など用具やルールにも安全のための改革が行われはじめたのです。日本のプロ野球での死亡事例はありませんが、社会人野球や高校野球の練習中の死亡事故は複数あるようです。また、選手だけではなくMLBではファールボールの直撃で観客が死亡した事故もあります。今は夏の高校野球の真っ盛り。炎天下の甲子園では、選手や審判員はもちろん、観客も万全の注意を払って臨む必要がありそうです。

夏草やベースボールの人遠し
  ~正岡子規(1867-1902)『俳句稿』

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