万葉歳時記 一日一葉

「万葉集」から1300年の時を超えた現代短歌・俳句まで、
昔と今を結ぶ日本人のこころの歌を歳時記にしました。

【風俗・風習】

#5070 青玉のしだれ花火のちりかかり消ゆる途上を君よいそがむ

令和8年8月15日(土) 【旧 7月3日 先負】 立秋・涼風至
 
青玉のしだれ花火のちりかかり消ゆる途上を君よいそがむ 
  ~北原白秋(1885-1942)熊本県玉名郡出身

 北原白秋の故郷、熊本県でもお盆の期間中に恒例の花火大会があります。しかし震災の影響で、昨日14日に予定されていた「小川町ふるさと祭り」での700発の花火大会、また今日15日に予定されていた山鹿温泉街での「山鹿燈籠まつり」は規模を縮小し、例年なら菊池川の夜空を4000発の花火で彩る納涼花火大会は中止になっています。

260815_青玉のしだれ花火のちりかかり
Photo:2025年に行われた「山鹿灯籠まつり」の納涼花火大会 ~山海荘ストーリーズ

 お盆は亡くなった家族や先祖の霊が現世に戻る期間であり、迎え火や送り火で霊を迎え送り出す習慣があります。花火大会がこの時期に多く開催されるのは、「精霊火」の風習と結びつき、先祖供養の意味を持たせたことが一因のようです。そういう意味では震災で被災者となった方々を少しでも元気づける一助になるかも知れません。今日15日には「人吉花火大会」が開催される予定です。

花火師の麦藁帽のあちこちす
  ~中村汀女(1900-1988)熊本市出身

遠花火つれの一人は女なる
  ~上村占魚(1920-1996)人吉市出身

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#5067 蓮の葉やみそ萩ぬらし雨すぎて銀河ながれぬ草市の上に

令和8年8月12日(水) 【旧 6月30日 大安】 立秋・涼風至

蓮の葉やみそ萩ぬらし雨すぎて銀河ながれぬ草市の上に
  ~金子薫園(1876-1951)『わがおもひ』


 「草市」とは7月12日の夜から翌日にかけて、盂蘭盆の仏前に供える草花や飾り物などを売る市で、かつては旧暦のこの日に全国各地で行われていました。「盆市」とも呼ばれますが、そんな中で今も変わらず賑やかに開催されているのは「もんじゃ」で有名な東京下町の「月島草市」。商店街に屋台や縁日が集まり、歩くだけでも季節感を味わえるとか。私もかつては東京に度々仕事で出かけていましたが、さすがにお盆休みに出張はありませんでした。東京下町の夏の風情もぜひ味わってみたかった。

四足の瓜も茄子も草の市
  ~正岡子規(1867-1902)

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#5059 橘の花の香かよふ朝風にさやぐ小鈴の音の涼しさ

令和8年8月4日(火) 【旧 6月22日 先負】 大暑・大雨時行

橘の花の香かよふ朝風にさやぐ小鈴《をすず》の音の涼しさ
  ~鹿持雅澄(1791-1858)

橘の花の香りを運ぶ朝風に揺れる風鈴の音の涼しさよ。

 土佐出身の鹿持雅澄《かもちまさずみ》は江戸時代後期の国学者。優れた歌人でもあり、彼の弟子の中には幕末に活躍する武市瑞山や吉村虎太郎もいました。

260804_橘の花の香かよふ朝風に
Photo:朝峯神社の風鈴祭り(高知市)

 さて、夏の風物詩の一つ「風鈴」の起源は約2000年前の中国で竹林に吊り下げて風の向きや音の鳴り方によって吉凶を占った「占風鐸」であると言われています。これを僧侶が日本に持ち帰ったものが青銅製の「風鐸」で寺の仏堂の四隅や仏塔に吊るすようになり、ガラス製の風鈴が現れるのは江戸中期になってから。オランダから伝わったガラス製法を用いて、当初は極めて高価だったそうです。

硝子風鈴夕風を知りゐたる
  ~細見綾子(1907-1997)

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#5053 みそぎする賀茂の河風吹くらしも涼みにゆかん妹をともなひ

令和8年7月29日(水) 【旧 6月16日 先負】 大暑・土潤溽暑

みそぎする賀茂の河風吹くらしも涼みにゆかん妹をともなひ
  ~曾禰好忠(平安中期)『好忠集』0499

六月祓をする賀茂の川風が吹いているようだ。涼みに行こう、妻といっしょに。

 納涼床は京都の夏の風物詩の一つで、この時期に関西で「川床」といえば納涼床のことを指します。鴨川の納涼床は毎年5月1日から9月末日まで、清滝川で行われる高尾の川床は11月末日まで開設されています。納涼床が年中行事化したのは江戸時代初期と考えられ、祇園会の前祭から後祭までの期間に限定していたようです。


 ちなみにもっとも有名な貴船の川床。この「貴船」は地名を指す場合は「きぶね」と読みますが、「貴船神社」の場合は「きふねじんじゃ」と呼ぶそうです。貴船神社は水の神様ゆえに濁ってはいけないのです。このあたり京都人のこだわりは、ええ加減な大阪人とはちょっと違うのでご注意を。

涼み床や下は川波上は酒
  ~松尾芭蕉(1644-1694)

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#5049 夏まつりよき帯むすび舞姫に似しやを思ふ日のうれしさよ

令和8年7月25日(土) 【旧 6月12日 大安】 大暑・桐始結花
船渡御に造幣局も灯をともす
  ~右城暮石(1899-1995)

 右城暮石《うしろぼせき》は高知県出身の俳人ですが、1920年から38年までの18年間は大阪で仕事をしていました。これはその当時、天神祭本宮の船渡御の様子を詠んだ俳句です。

260725_船渡御に造幣局も灯をともす
Photo:天神祭の船渡御と奉納花火 ~かいぶつくん

 日本三大祭の一つ、京都の「祇園祭」は今月1日から既に始まっており、後祭の山鉾巡行は昨日24日に行われましたが、祭りの行事は31日まで行われます。大阪の「天神祭」は昨日が宵宮、今日が本宮を迎えます。ちなみに東京の「神田祭」は「本祭」が西暦の奇数の年に行われるため、今年は規模の小さい「陰祭」の年にあたるため大規模な行列や神輿の連合宮入は開催されず、代わりに5月中旬に神事が執り行われています。色んな形がありますが、それぞれの地方で大切にされてきた伝統的な夏祭りはこれからも大切にしたいですね。

夏まつりよき帯むすび舞姫に似しやを思ふ日のうれしさよ
  ~与謝野晶子(1878-1942)

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